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 >> 成績が上がる勉強法コラム

「やってはいけない勉強法」  考える学習をすすめる会 理事 石田 和彦


家では、かなり時間かけて勉強しているみたいなんですけど・・・。」
 私の塾にかかってきた、問い合わせの電話。
「その割に、全然成績が伸びないんですよね。」

 お家の人の切なる悩み。もちろん、一番困っているのは生徒本人だ。とにかく、一度、本人に来てもらうことにした。
 科目は何でもいいから、今使っている問題集を1冊持って。
 
 以下、そのときの、生徒(藤本梨華さん・仮名・中3)と私(石田)との対話。

石田: さっそくだけど、問題集見せて。
藤本: 今日持ってきたのは、社会です。歴史の総合問題あたりまでやってあります。
石田: (パラパラ見ながら)ふ〜ん。けっこう、がんばってやってるんだ。
藤本:はい、家ではどの科目もそれなりに勉強してるつもりなんだけど・・・。

 藤本さんが持ってきた問題集は、市販の、ごく一般的なもの。彼女は1ページも飛ばさずに、しっかりとやってある。
 
 赤ペンでマルつけもしてあるし、間違えたところは、正答例をやはり赤ペンで書き加えてある。ここまで、あまり問題はない。
 けれども、どうしても気になった私は、彼女に次のページを実際にやってもらった。家でやっているのと全く同じように。

 20分ほどで1ページが終わる。
 赤ペンを取り出した藤本さんは、「答え合わせ」を始める。合ってるところはマル、空欄と間違えたところは、答えを書き写す。

藤本: こんな感じなんですけど。
石田: これで、このページ終わり?
藤本: はい。 
石田: 残念だけど、このやり方じゃあ、はっきり言って時間の無駄だね。

 初対面のオッサンから、いきなりひどいことを言われ、彼女は今にも泣き出しそう。「ごめんね」って3回謝ったら、許してくれた。
 
 私が「時間の無駄」だと言い切った根拠は何か?
 彼女は、「答え合わせ」が何なのか、何のために行うのか、まるで分かっていなかったからである。

 一つだけ、確実に言えることは、「こんなものは勉強でもなんでもない」ということ。少なくとも、問題集の正しい活用法ではない。

 そうとは知らずに「自分はがんばって勉強している」と思い込んでいる人が、なんと多いことか!
 マア、何もしない人よりははるかにいいけど・・・。



 本当の「答え合わせ」がどんなものか、藤本さんが持ってきた問題集のページをそのまま使って解説しよう。(以下、藤本さんが間違えた問題のみ、部分抜粋)


(1)資料1(銀閣の写真)が建てられたころの文化を何というか。

(2)資料2の法令(布教のために密航してくる者や、隠れ住む宣教師や信者に援助を行ったりする者がいる。今後はポルトガル船の来航を禁止する)において、幕府がポルトガル船の来航を  禁止した目的を、簡潔に書け。

(3)資料3(日独伊三国同盟)のできごとに関連することがらを、次のア〜エから1つ選べ。
  ア.こののち、日本は第一次世界大戦に参戦した。
  イ.これによって日本は国際連合に加盟した。
  ウ.これによって日本は台湾などを譲り受けた。
  エ.これより日本とアメリカの対立が深まった。


石田: (1)は「東山文化」だよね。君、ここ空白だけど、何か書こうと思ったことなかった?
藤本: ナントカ文化って、いっぱいあるから、覚え切れなくて・・・。「天平文化」って書こうと思ったんだけど、ぶっちゃけ、自信なかったし・・・。
石田: それ、奈良時代だろう。文化の名前は、時代、特徴、代表的な建築物・書物・人名を多角的に覚えとかなきゃ。そのためには教科書や資料集の写真などを、イメージとして植えつける必    要があるな。「東山文化」と言えば、足利善政の銀閣。東山は京都の地名で、銀閣があるところだ。この写真と書院造の室内を頭の中に焼き付けておこう。

藤本: (2)は、「布教のために密航してくる者や、隠れ住む宣教師や信者に援助を行ったりする者を取り締まるため」って書いたけど、答えと全然違っちゃった。
石田: 君が書いたの、合ってるよ。なんで、×したの? いいかい、問題集の解答は「模範解答」なんだ。「正答例」とは違う。模範解答なんてものは、大人、それも、専門家が作ったものだゼ。君たちがこんなにうまく書けるわけないじゃん。論述式の問題が合ってるかどうか、自分で判断できないときは、必ず、信頼できる教科の先生に聞いて確かめなきゃ。

 ところで、(3)は「イ」って間違えて、「エ」に書き直しただけだよね。じゃあ、何でイが違っているのか、説明してみな。
藤本: ・・・。
石田: じゃあ、何でエが正しいの?
藤本: ・・・。
石田: 時間の無駄だと言ったのはここなんだ。記号問題で間違えたところを書き直すだけじゃあ、カタカナを書く練習しているようなもんだ。


  日独伊三国同盟が成立したのは、1940年。年号など覚える必要ないが、第二次世界大戦の前。では、日本が国際連合に加盟したのは?
藤本: 第二次世界大戦の後。
石田: そう。だから、イは違うんだ。エが正しい理由は?
藤本: 日独伊三国同盟にムカついたアメリカと日本が戦争になった?
石田: かなりおおざっぱだが、いいだろう。記号問題に限らず、自分が間違えた問題はどこが違っているのか、正解のどこが正しいのか。そこまで考えなきゃ。

 いいかな、諸君。これも、我々が提唱する「考える学習」の一環だ。


<まとめ>問題集を使った学習の仕方

1.用語の意味は確実に覚え、関連事項と結びつけて考えること。
2.論述問題は、明らかに間違えた場合を除き、信頼できる(学校や塾の)教師にアドバイスを求めること。
3.間違えた答えはどこが違うのか、正解のどこが正しいのか理解できるまで、学習を掘り下げること。

 これをやってたら、1ページ20分じゃ終わらないよ。マア、1時間はかかるだろうね。


 勉強なんてものは、時間を決めてやるもんじゃない。
 気が付いたら、時間が経ってるもんなんだ。